7日間ブックカバーチャレンジ




Twitterで投稿していた、#7daysbookcoverchallenge(7日間ブックカバーチャレンジ)
7日めを迎えたので、それぞれの本の紹介をしていきます。

7日間ブックカバーチャレンジとは?

読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、好きな本を1日1冊、7日間投稿。本についての説明は必要なく、表紙画像だけをアップ。


■Day 1

紅茶と薔薇の日々(森茉莉著・早川茉莉編/ちくま文庫)

森鴎外の娘にして大の食いしん坊、森茉莉の“おいしい”が詰まったエッセイ集。
鴎外の好きな食べ物や、子ども時代の食卓でのエピソード、日々の料理に関する話題まで、あらゆる食事に対しての茉莉嬢のこだわりがうかがえる。
もっともときめくのは、「私は大変なお嬢様育ちで……」と自身のステイタスをさらっと語りはじめるところ。でも、ちっとも嫌味に聞こえないのはどうしてなんだろう。
自分の年齢や立場を露ほども気にせず、まっすぐにロマンを語る彼女に、いつも憧れている。


■Day 2

ここから世界がはじまる トルーマン・カポーティ初期短篇集(小川高義訳/新潮社)

『ティファニーで朝食を』で知られるカポーティの、思春期から20代はじめにかけて書かれた未発表作品を収録。
オードリー・ヘップバーン主演のきらびやかなラブストーリーがイメージされがちだけれど、本来のカポーティの魅力は、居心地の悪さや薄気味悪さ。
若い時代ならではのみずみずしい“奇妙さ”が、短いストーリーにぎゅっと詰め込まれていて、これぞ天才、と読み手を唸らせるような、洗練された文章と後味の悪い結末に終始どきどきしてしまう。
8歳から作家になったと自称するカポーティの、早熟な才能に目を開かされる14篇。


■Day 3

日曜日はプーレ・ロティ ちょっと不便で豊かなフランスの食暮らし(川村明子/CCCメディアハウス)

パリのル・コルドン・ブルーで料理を学び、帰国後はさまざまなメディアで食に関わる発信を続けてる川村さんによる、パリ時代の食エッセイ。
ちょっと手間だけれど、ドレッシングやマヨネーズは手作りする。スーパーではなくて、マルシェで新鮮な野菜を調達する。フランスの食卓に欠かせない、チーズやバターのはなし。そして日曜の夜のお楽しみ“プーレ・ロティ(ローストチキン)”。
楽をしようと思えばいくらでもできるけれど、疲れた時こそちょっとだけ手間をかけて、おいしい時間を過ごしてみたら、いつもよりぐっと豊かなきもちになれる。
家での時間が増えた今こそ、新しく取り入れたい習慣が満載。


■Day 4

音楽と音楽家(シューマン著・吉田秀和訳/岩波文庫)

ドイツ初期ロマン派の作曲家、ロベルト・シューマン。指の故障をしピアニストとしてのキャリアを断念したことがきっかけで、音楽評論家としての活動をはじめたことはどれほど知られているだろうか。
当時の音楽批評に満足していなかった彼は、ドイツの芸術ポエジーを取り戻すために「音楽新報」を創刊し、たくさんの論文をのこした。この本では、その多くを収めている。
ベートーヴェンやショパンなど名だたる音楽家たちへの鋭い批評や、ドイツ音楽史の貴重な資料としての価値はもちろんだが、わたしは後半に収録されているシューマンの「座右の銘」をつづった文章がすき。

それでは、音楽とは何だろうか。両眼を譜面に心配そうにくっつけて、やっと曲をひきおわるというようでは、音楽ではない。(中略)その先がどうなるか大体感じられるとか、前から知っている曲なら、隅から隅まで覚えているようならば-つまり指だけでなく、頭にも心にも音楽を持っているようならば、音楽的といえる。

生き方も音楽に対する姿勢も、完璧なロマン派!


■Day 5

ぼくのオペラ・ノート(黒田恭一/東京書籍)

クラシック音楽がすき、という少女に絶対に薦めているのは黒田先生の著書。
黒田先生の、何かを否定することは言わない・読み手を見下すような文章は絶対に書かない・ひたすら音楽とアーティストへの愛に溢れている・だけど的確で論理的で、初心者にもマニアにも響く解説をしてくれる…という姿勢は、はじめて読んだときからいまもわたしが文章を書く時の指針になっている。
すべてが必読だけれど、今回はオペラにまつわるこちらをセレクト。クラシック・コンサートの中でも、上演時間の長さやチケットの価格によって敷居が高くなっているオペラを、楽しくわかりやすく伝えてくれている。
黒田先生の魅力はもっとお伝えしたいので、またの機会に詳しく書くとする。


■Day 6

夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語(カズオ・イシグロ著・土屋政雄訳/早川書房)

ヴェネチアのサンマルコ広場で演奏する流しのギタリストと、アメリカ人歌手とその妻が出会う『老歌手』をはじめ、音楽をテーマに人生の夕暮れに直面した人々を描いた短篇集。夫婦の危機、というのも共通したテーマである。
物語に登場する人物たちは、いつも何か不満や悲しみを抱えていて、才能に悩んでいて、そのせいで周囲の人を傷つけてしまったりもする。そうした中でも、うまくいかない現実と温かい出会いを、音楽が紡いでいく。壮大な人生論を語るのではなく、淡々と生活の一瞬一瞬を切り取るような描き方は、カズオ・イシグロならではの美しさ。
登場する音楽もクラシックやジャズ、アメリカの古いブロードウェイソングなど、ごちゃまぜになっている感じも良い。
『降っても晴れても』の主人公レイモンドいわく、彼らの時代は若者は二極化していて、プログレッシブロックを聴く長髪のヒッピーと、ツイードを着てクラシックを聴くタイプしかいなかった…とのこと。80年代イギリスのカルチャーシーンをおもえば、確かにそうだったのだろう。でもね、レイモンド。アルゼンチンタンゴを聴くけどエディット・ピアフも好きで、インディー・ロックも追いかけるあなたの甥、なかなか趣味がいいと思うの。


■Day 7

ユートピア(トマス・モア著・平井正穂訳/岩波文庫)

“ユートピア”は、トマス・モアがつくった造語である。しばしば理想郷、と訳されることが多いが、ここでは少し違う。ギリシャ語を組み合わせて「どこにも無い」という意味を指し、非人間的・管理的な、モアが理想とする国を描いた物語だ。
人々はみな清潔な服を身につけ、財産を私有せず、空いた時間に芸術や科学研究を行う。戦争も、もちろんしない。これだけを聞くと、まるで夢のような国の話であるが、つまるところはかつて存在した社会主義国家の掲げていた政策であり、これらが失敗であったということは歴史上で明らかになっている。
価値観や思想がすべて統一され、規律をかねそなえ、争いのない機械的な世の中こそが、モアの描く理想だった。
…果たして、これが私たちにとっての“理想郷”なのだろうか。
民主主義が揺らぎ、国民が声を上げなければいけない状況のなかで、もう一度読み返し考えたいとつくづく思う。
単なるファンタジー小説として読むという楽しみも、それはそれで。