Oh Holy Night ~BCJのクリスマス~

11月も半ばになり、街中がクリスマスカラーに色づいてきた。
ディケンズやアガサ・クリスティーの小説を引っ張りだして、待降節を待ちわびる。
この時期はクリスマス・ソングとジンジャーブレッドラテを堪能するために、スターバックスに足を運ぶ機会も増える。
フランスのノエルも好きだけれど、プロテスタント育ちの私が思い浮かべるのはディズニーチャンネルや『ゴシップガール』、『ホーム・アローン』で垣間見たアメリカのクリスマス。
それからバッハの音楽。

J.S.バッハの音楽を楽しむ方法はたくさんあるけれど、まず私がおすすめしたいのはバッハ・コレギウム・ジャパン。
演奏家、指揮者、学者としても高い評価を受けている鈴木雅明が設立し、J.S.バッハの宗教作品を中心にバロック音楽の理想的な演奏方法を追求し続け、世界的にも高い評価を受けている楽団。
クラシック音楽の中でも古い時代の音楽を主体としているのに、演奏や取り組みがとことん新しいのがこの楽団の魅力だと思う。バロックや宗教音楽はすごく堅いイメージがあって、長いこと苦手だったのだけど、BCJに出会ってからはもう夢中。すっかり古楽の虜になってしまった。

もともとプロテスタント教会で賛美歌を積極的に歌うようになったのは、信徒が積極的に礼拝に参加し、聖書の言葉をより深く理解できるようにと、マルティン・ルターが積極的に賛美歌を作曲したり、音楽的な活動を進めたことに起因する。
ドイツ・プロテスタント音楽の作曲家・演奏家として名をはせたJ.S.バッハも多分に漏れず、音楽を通して聖書(=神の言葉)を理解することが最高の祝福だと信じ、たくさんの名曲を書き続けてきた。
ドイツ・オルガンミサとも呼ばれている《クラヴィーア練習曲集第3巻》の初版譜には、こう記されている。

教理問答歌その他の賛美に基づく、オルガンのための種々の前奏曲からなる。
愛好家、および、とくにこの種の作品に精通する人々の心の慰めとなるように。
―東京書籍「バッハ事典」より

J.S.バッハの素晴らしいところはいくつもあるけれど、音楽性がどこまでもニュートラルなところ。
感情を高ぶらせることなく、落ち着かせるとも違う、フラットな姿勢で音楽を聞かせてくれるところ。
それから、これはなぜだかわからないけれど、ピアノを習いたての子どもが弾いても、プロが弾いても、良さが引き出せる音楽になること。
つたない演奏でもきちんと感動できることを実感すると、「偉大な音楽の下では、だれもがみな平等になるのだ」という言葉を思い出す。
御心に敵う人であれ、という聖書の教えがある。誰を拒むことなく、すべてのことを受け容れようということ。
オルガンの響きや美しい合唱ともに、やさしい心でクリスマスを迎えられますように。


RECOMEND

■きよしこの夜/BCJのクリスマス(Verbum Caro Factum Est A Christmas Greeting)
鈴木雅明、バッハ・コレギウム・ジャパン、鈴木優人

鈴木優人による企画・構成・演出で、2013年より始まったクリスマス・コンサート。
2017年までの5年間で演奏された曲の中から、選りすぐりのクリスマス・キャロルを19曲収録。
鈴木優人による編曲が、原曲の美しさに新しい魅力を生み出している。「きよしこの夜」や「あめにはさかえ」など、だれでも聴いたことのある賛美歌のほか、フランスの作曲家ダカンによるオルガン曲も収録されていて、クリスマス気分を存分に味わえる1枚。
BCJの演奏をはじめて聴く人や、クラシックビギナーへのクリスマスプレゼントにもおすすめ。